【登場人物】
・花子さん:明るく世話焼き、ちょっとミーハー
・人体模型:几帳面で理屈っぽいが少しズレてる

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【SE:学校の放課後の静けさ/遠くの部活の声】

花子:はぁ〜……

【SE:トイレの水がコポ…と鳴る】

人体模型:……ため息が湿っているね。さすがトイレ在住。

花子:うるさいわね。っていうか今の褒めてないでしょ。

人体模型:事実の指摘だよ。それより、どうしたんだい?

花子:ねぇ聞いてよ。最近の子たち、全然来ないの。

人体模型:来ない? 君、呼ばれて出ていくタイプの怪異だろう?

花子:そうよ!「トントントン」って3回ノックしてくれないと始まらないのにさ!

人体模型:ふむ……供給不足だね。

花子:それがね、どうも“5回ノック”って噂が広まってるらしくて。

人体模型:5回?

花子:そう!「トントントントントン」って!

人体模型:……多いな。

花子:でしょ!? 5回も叩かれても私、契約外だから出られないのよ!

人体模型:契約なんだ。

花子:暗黙のルールよ!3回って決まってるの!
   それを勝手に改変されても困るのよ!

人体模型:なるほど。仕様変更に現場が追いついていない、と。

花子:ほんとそれ!アップデートするなら事前に言ってほしいわ!

人体模型:じゃあ、5回でも出ればいいんじゃないか?

花子:軽く言うけどね!?
   そういうの崩すと“ブレる”のよ、怪異として!

人体模型:ブレるとどうなるんだい?

花子:……なんかこう、怖さが半端になるの。

人体模型:ああ、ブランドイメージの毀損か。

花子:そうそれ!って誰がブランドよ!

【少し間】

人体模型:しかし、このままだと君、暇なんじゃないか?

花子:……暇よ。めちゃくちゃ暇。

人体模型:じゃあさ。

花子:なによ。

人体模型:理科室に来るかい?

花子:え?

人体模型:最近「夜中に人体模型が動く」って噂、結構来てるんだ。
     ノックとか関係ないし。

花子:え、なにそれずるい。

人体模型:手伝ってくれれば、出演機会を分けてあげてもいい。

花子:出演って言い方やめて。

【SE:足音(花子が移動する気配)】

花子:……まぁ、ちょっとだけよ?

人体模型:ようこそ理科室へ。

【SE:ガラッと扉】

【間】

女子生徒の声(遠く):ねぇねぇ、ほんとに動くのかな?

別の声:やってみよ!せーの!

【SE:コツ…コツ…(骨が動く音)】

人体模型:(小声)来た。

花子:(小声)いい?私どうすればいいの?

人体模型:(小声)とりあえず立ってれば怖いよ。

【SE:悲鳴「きゃーー!!」→走り去る足音】

【静寂】

花子:……すご。

人体模型:ふふん。どうだい。

花子:めっちゃ呼ばれてるじゃない。

人体模型:まあね。

花子:……私、一言も喋ってないんだけど。

人体模型:うん。

花子:……ねぇ。

人体模型:なんだい?

花子:私、いらなくない?

人体模型:うん。

【間】

花子:ちょっとは否定しなさいよ!!

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【オチ後・小さく】

花子:……やっぱりトイレ帰る。

人体模型:そうした方がいいね。君は3回ノックの方が似合ってるよ。

花子:……次はちゃんと3回で来てよね。

【SE:遠くで「トントントントントン…」】

花子:だから5回は違うってばーーー!!

【フェードアウト】